家族信託は、財産の管理・運用・処分を信頼できる家族に委ねることで、任意後見制度や遺言書よりも柔軟な財産管理を可能にする点が大きなメリットです。ここでは、家族信託が有効な具体的なケースについてご説明します。
活用方法1:将来の施設入居費用の確保
高齢者施設への入居を検討する際、「入居後の自宅の管理」と「入居費用の準備」は重要な課題です。一人暮らしの場合、施設入居後に自宅が空き家になると、管理が困難になるだけでなく、減税の特例が適用されず固定資産税が高額になるなど、様々な問題が生じます。また、入居費用は施設の種類やサービス内容によって大きく異なり、数十万円から数百万円に及ぶこともあります。さらに、月額費用も数万円から数十万円かかるため、入居前にまとまった資金を準備しておく必要があります。
施設入居前に自宅を売却し、入居費用や月額費用のための資金を確保する方も多くいます。しかし、契約手続きには判断能力が必要とされるため、認知症になると自宅の売却手続きを行うことができません。そこで、事前に家族信託を利用し、自宅を信託財産として家族に委ねておくことで、ご自身が施設に入居するタイミングで認知症になっていたとしても、委任された家族が自宅を売却し、資金を捻出することができます。
活用方法2:「親亡き後問題」への対応
障がいを持つ子どもの親御さんの多くが、「自分亡き後は誰が子どもの世話をするのか」という不安を抱えています。子どもの生活面や経済面など、心配事は多岐にわたります。家族信託は、このような「親亡き後問題」の対策として有効です。受託者を親族、受益者を子どもに指定しておくことで、ご自身が亡くなった後の子どもの財産管理を親族に委ねることができ、子どもの経済面を心配する必要がありません。さらに、このような場合は家族信託と併せて後見制度を利用することで、経済面だけでなく生活面の支援も受けることができます。
活用方法3:2世代先の承継者の指定
遺言書では、自分の財産の相続人を指定することができますが、相続人は一代しか指定することができません。例えば、「相続財産である土地を自分の息子に相続させ、息子が亡くなった後はその息子の姉に相続させる」というように、二代にわたって相続人を指定することはできず、このような遺言を残していたとしても無効になります。このような相続を検討される方は、遺言書では実現することができないため、「後継遺贈型受益者連続信託」を利用しましょう。「後継遺贈型受益者連続信託」とは、受益者を複数世代にわたって指定できる家族信託であり、ご自身の子どもが亡くなった後も、指定した親族に財産を取得させることができます。なお、信託の設定時点において、受益者が生まれていない人でも受益者として指定することができます。
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